腸の中には、「もうひとつの器官」(KOSMOST内関連リンク: https://kosmost.jp/inside-yourself/another-organ/ )とも形容される「腸内細菌叢(腸内フローラ)」が存在している。この存在が腸内環境のみならず、睡眠をはじめとする脳機能にも影響を及ぼす可能性のあることがわかってきている。
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授と、慶應義塾大学 先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授を研究代表者とする研究グループは、腸内フローラと、脳機能のひとつである睡眠の関係について研究している。その結果、「腸内フローラの存在が、睡眠の質を低下させるなどの影響を与えている可能性がある」ことが判明した。
この研究では、腸内フローラを取りのぞいたマウスと、正常なマウスを使って実験。腸内フローラを取りのぞいたマウスでは、ビタミンB6とセロトニンが減少し、グリシンとγアミノ酢酸(GABA)が増加するなど、変動が見られることがわかった。
次に脳波・筋電図を計測して睡眠を解析したところ、腸内フローラを取りのぞいたマウスでは、本来、睡眠を取る時間帯に活動が増え、逆に活動が盛んな時間帯に睡眠を取っており、昼夜のメリハリが弱まっていることなどが判明した。
また、同研究グループでは、他にも睡眠不足に陥ったときに腸内環境にどのような作用をもたらすかなどの研究を進めている。将来的には、食を通じた腸内環境コントロールによる睡眠改善法の開発も視野に入れているという。
Reference:以下の情報を参考に作成しています
筑波大学 TSUKUBA JOURNAL に掲載のプレスリリースより編纂
【TUSKUBA JOURNAL】
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20201117200209.html
【プレスリリース】
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/images/201117yanagisawa%20%281%29.pdf
[ ここに注目 by KOSMOST 編集部 ]
KOSMOSTでは「健康寿命は、腸内環境を整えることから(KOSMOST内関連記事: https://kosmost.jp/inside-yourself/healthy-life-gut/ )」など、これまでも腸内環境と健康との関係についてご紹介してきました。今回の、腸内環境のバランスが睡眠の質にまで影響を与えている調査結果は、生活の質的向上(QOL)や、ウェルネス向上に役立つと考えます。
柳沢教授や福田教授らの研究グループは、腸内環境と脳機能のひとつである睡眠との相互作用に関する研究のみならず、研究成果を生かし、健康増進のための方法論を開発することまで目指されているとのこと。こうした研究の積み重ねが、私たちのウェルネスを支えているのですね。
また、研究で触れられていたビタミンB6やセロトニン、グリシンやγアミノ酢酸(GABA)はいずれも睡眠に関係があるといわれています。とすると、私たちの睡眠の悩みが、食生活のセルフケアを通じて腸内環境を改善することで解消される日も、そう遠くはないのかもしれません。
KOSMOSTでは、腸内環境に関する記事を「おなかのこと(KOSMOST内関連リンク: https://kosmost.jp/category/inside-yourself/ )」のカテゴリーを中心に掲載しています。そちらもあわせてご参照ください。