微生物のこと
2021.11.29

微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー011:『世界一やさしい!微生物図鑑』

ライブラリー・微生物図鑑・鈴木智順・新星出版社

KOSMOST 編集部が読んだ“おすすめ本”ライブラリー。  
微生物が愛らしくなる本を紹介します。  

 


ライブラリー 011

『世界一やさしい!微生物図鑑』  

鈴木智順著, 新星出版社, 2020年7月15日  


 

微生物について、学校では学んでこなかった? 

本書は、東京理科大学で微生物の研究をされている著者が手がけた微生物図鑑です。ユニークなイラストや図解とともに微生物を知ることができる楽しい1冊です。 

著者は、この本の冒頭で、学校では「微生物とは死骸や排せつ物の分解者である」と習うのだと書いています。「そのためか、微生物に地味でパッとしないイメージをお持ちの方も多いかもしれません。食中毒や腐敗などに起因する悪いイメージを持っている方もいらっしゃるでしょうか」という問いかけが続きます。 

しかし、本書のねらいは、“想像を超えた微生物の世界”をのぞくこと。地球環境や人間の体にとって重要な働きをしている微生物がいることもクローズアップしています。ここが、KOSMOST編集部の考えと重なります。KOSMOSTでは、微生物とともに暮らす楽しさや豊かさを話題にしていますが、まさにそんな微生物たちにも出会える本なのです。 

  

ひと目でわかる章立てで、どんな微生物がいるのかをざっと把握 

微生物とひと言でいっても、その種類はさまざまです。本書では、微生物たちをこんなふうにわかりやすく章立てして紹介しています。 

 

  • いつも一緒にいる微生物……

表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、アクネ菌、緑膿菌、マラセチア菌、ミュータンス菌、スピロヘータ、大腸菌ビフィズス菌ウェルシュ菌 

 

  • 出会いたくない微生物……

マイコプラズマ、リケッチア、MSRA、カンピロバクター、溶結性レンサ球菌、炭疽菌、白癬菌、カンジダ、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ノロウイルス、狂犬病ウイルス、天然痘ウイルス 

 

  • おいしい微生物……

乳酸菌納豆菌コウジカビ酵母酢酸菌、シイタケ、マツタケ、トリュフ、冬虫夏草 

 

シアノバクテリア、化学合成微生物、根粒菌、放線菌、糸状菌

 

  • 医療を支える微生物……

アオカビ、ストレプトマイセス、ボツリヌス菌、サルモネラ菌、バクテリオファージ 

 

  • 微生物界のホープたち:

カプリアビダス・メタリダランス、オーランチオキトリウム、発電菌、磁性細菌、クラドスポリウム・サファエロスペルマム 

 

皆さんは、このうちどれぐらいの微生物をご存じですか。KOSMOSTでは、特に、私たちのからだのなかに棲む「いつも一緒にいる微生物」や、食べ物の味や栄養分に関わる「おいしい微生物」、地球の生態系を支える「環境に関わる微生物」について、よく話題にしていることがわかりました。 

 

微生物の人類への貢献度と危険度 

気になる微生物があれば、巻末の索引からもさっとひけるので便利です。1つの微生物について、見開き1ページでイラストとともに紹介されていて、それぞれに、微生物の分類、サイズ、発育温度、主な住処、文章での解説が書かれています。ユニークなのは、「貢献度」と「危険度」を5段階で評価しているところです。「貢献度」では、医療や食文化などの分野で人類にどれぐらい貢献しているかをハートマークで記しています。「危険度」では、毒性の強さや感染力の強さなどで、人類にどれぐらい危険かをマークが示します。 

たとえば、貢献度の5段階評価で満点の微生物は「シアノバクテリア」。地球初の酸素を生み出す生物で、大気に酸素を供給するなど、現在の生態系の基礎を作ったことが評価されています。 

KOSMOSTでよく登場する微生物たちの貢献度を見てみましょう。「乳酸菌」は、体を元気にするたくさんの作用があり腸内環境の健康維持にも大事だということから評価は💛4つ。「コウジカビ」は、日本で古くから麹として調味料や酒造りに活用されてきたので、評価は💛4つ。「ビフィズス菌」は、整腸作用の他、病原菌の感染を抑える効果もあるとされることから、💛4つ。空飛ぶ「納豆菌」の話もKOSMOSTで取り上げましたが、脳梗塞の原因となる血栓を予防したり病原性大腸菌の増殖を抑制するので、こちらも💛4つの貢献度でした。 

 

社会問題をも解決する微生物たち 

近年注目されているものに、社会の問題を解決する役割を果たす微生物の存在があります。たとえば、資源問題には、新しいエネルギー源を微生物の力でつくりだす開発が進んでいます。医療分野では、「磁性細菌」がつくるナノサイズの磁石を、患部へピンポイントに誘導できる治療薬の研究が行われています。他にも、環境汚染や食糧危機にも微生物が一役買う可能性があるそうです。しかし、 

 

人類がこれまでに発見した微生物は、地球上に生息する微生物のほんの1%にしかすぎません

 

これは驚くべき事実です。99%の微生物は、まだ私たち人類が発見できていないといわれているのです。そのため、研究者たちは日夜、新しい微生物を発見するために研究を重ねています。微生物の世界を知ることは、私たち人類にとって、とても可能性に満ちていることがわかりますね。 

 

 

【微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー:バックナンバー】   

001:『見えない巨人―微生物』 
002:『細菌ホテル』 
003:『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』 
004:『微生物のサバイバル1・2』 
005:『日本発酵紀行』 
006:『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』 
007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』 
008:『ととのう発酵』ディスカバー・ジャパン2021年7月号 
009:『もやしもん』 
010:『最終結論「発酵食品」の奇跡』 
011:『世界一やさしい!微生物図鑑』 (現在の記事)
012:『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』
013:『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』  
014:『土と内臓―微生物がつくる世界』  
015:『ノーマの発酵ガイド』   
016:『生物と無生物のあいだ』 
017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』 
018:『人体常在菌のはなし ── 美人は菌でつくられる』 
019:『生物から見た世界』
020:『麹本: KOJI for LIFE』

 

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KOSMOST 編集部

KOSMOST 編集部

KOSMOST編集部。2020年10月22日に創刊。おいしいこと、からだのこと、うつくしきこと、微生物のこと、おなかのこと、せかいのことをめぐる情報をつうじて、みなさまがウェルネス豊かなライフスタイルをおくれますように! -------- Q. ウェルネスのために心がけていることは? → A.いろいろな方々との発酵ダイアログから、新しいアイディアをうみだすこと! 🦠 KOSMOST編集部の記事一覧

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