せかいのこと
2022.04.11

おうちで作る発酵バターで、あんバターを

発酵バター・あんバター・乳酸発酵

「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが発酵食品を語るコラム。今回は自作の発酵バターでつくる「あんバター」のお話です。さて、その味わいはいかに? 

 

バターと発酵バターはどこが違う?

最近人気があるのが「あんバター」。それをパンにはさんだ「あんバターサンド」も街のパン屋さんでよく見かけます。甘じょっぱいあんこに、バターの濃厚な舌触りとこってり感が加わって、何とも言えず懐かしいような美味しさだなと思います。 

今回は「あんバター」に注目して、ひと手間かけて発酵バターを作って食べてみたいと思います。 

日本のスーパーマーケットで売られているバターのほとんどは発酵していないバター。日本でバターと言えばこのタイプです。最近は発酵している「発酵バター」も見かけるようになりました。英語ではどのようにいうのかと調べてみると、日本のバターは「Sweet Cream Butter」、発酵したバターは「Fermented Butter」というようです。 

さて、Sweet Cream Butterは日本と北米では「バター」と一般的に呼ばれている主流派のバターです。これは、低温殺菌した乳脂肪分が高いクリームを攪拌(かくはん)して、乳脂肪分とホエイと呼ばれる水分に分けて、その乳脂肪分のほうを練ったものです。 

一方のFermented Butterはヨーロッパに古くからあるタイプ。基本的な作り方はSweet Cream Butterと同じですが、その主な違いはクリームに乳酸菌をプラスして発酵させることです。発酵のおかげで、少し酸味が感じられます。低温殺菌の技術がまだないころにはバターを作る工程に時間もかかり、自然に発酵していたということのようです。 

 

発酵バターを作ってみる

発酵バター・クリーム・乳脂肪

発酵バターを作るために、乳脂肪分が40%以上のクリームを使いました。この作り方では、バターが完成すると乳脂肪分は80%以上になります。80%以上の乳脂肪分はバターであることの条件の一つです。バターを100g作るためには、乳脂肪分4%の牛乳なら2リットルは必要ということになります。

発酵バター・クリーム・ヨーグルト

今回使ったクリームの量は400ml。そこに無糖のヨーグルト60mlを入れてよく混ぜます。 

発酵バター・ヨーグルトメーカー

40度の温かさで一晩発酵させるため、ヨーグルトメーカーで8時間と設定しました。

ハンドミキサー・乳脂肪・ホエイ

8時間が過ぎて発酵が進むと、もったりと重みが出てきました。これをハンドミキサーで攪拌すると、固形部分と水分、つまり乳脂肪分とホエイに分離します。

チーズクロス・乳脂肪・ホエイ

ざるの上にチーズクロスを敷いてその上にあけて、ホエイを下に落として分けます。

ホエイ・バターミルク

ホエイは「バターミルク」とも呼ばれます。飲んでみると薄いヨーグルトドリンクのような味で、飲料として、またパンケーキを作る際に使ったりするそうです。

発酵バター

チーズクロスに残った乳脂肪の部分を練ったのがこちら。これが発酵バターです。元のクリームの半分以下の量になっていました。 

 

爽やかな酸味とさっぱりとした甘み 

少し口にしてみると、爽やかな酸味とすっきりとした甘みがあります。そのせいか、ねっとり感が少なく感じられます。これは甘いものにもよく合いそうです。

発酵バター・お彼岸・おはぎ

ちょうど発酵バターを作った日がお彼岸だったので、おはぎに乗っけてみました。(うちのおはぎは、ご飯をあんでくるまずに、ご飯にあんを乗っけます)よくあいます。バターのくどさを感じにくいんですね。また、冒頭の写真のようにあんバターサンドにもしてみました。こちらもすっきりとした仕上がりになっています。 

 

ただ、コストを考えてみると、自作の発酵バターはとても高くつきました。市販のものの2倍以上といった印象です。でも、一度作ってみるのは、その発酵のプロセスも楽しめるのでおすすめです。異なる発酵時間で風味も変わると思います。味のほうも、無塩にも好みの塩辛さの有塩にも仕上げられるので、自分の好みの発酵バターを作れます。 

 

[All photos by Atsushi Ishiguro] 

<一覧へ戻る
石黒 アツシ

石黒 アツシ

「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中のおいしいものを食べ歩き、食文化を写真に収め、日本で再現してみんなと食べることをライフワークにしている「旅行家・写真家・食事家」です。KOSMOSTのコラムでは、これまで旅先で食べてきた発酵食品を、皆さんと一緒に楽しみたいと思います。 -------- Q.「微生物とともに生きるライフスタイル」で大切にしていることは? → A. おいしい発酵食品を、おいしくいただいています。 -------- 🦠 石黒アツシの記事一覧 ------- 🦠石黒アツシwebsite

2021.06.02
ワインが生まれたジョージアのワイナリーを見学して試飲しました!
2022.05.09
台湾の朝といえば、香酢と豆乳で作る鹹豆漿(シェントウジャン)
2022.09.17
パリで作る日本の家庭料理とお醤油事情
2022.02.16
大豆発酵食品テンペ ~インドネシア・バリ島で出会った伝統と味

シェアする

おうちで作る発酵バターで、あんバターを

KOSMOSTの最新情報は
TwitterやFacebookやインスタをフォローしてチェック!