微生物のこと
2021.05.24

微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』

ライブラリ
(読了時間 : 3分)

KOSMOST 編集部が読んだ“おすすめ本”ライブラリー。
微生物が愛らしくなる本を紹介します。

 


ライブラリー 007

『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』

アランナ・コリン著 矢野真千子訳

河出書房新社 2016年8月30日 初版発行


 

あなたのからだのうち、ヒトの部分は10%しかない

なんとも目を惹くタイトルです。そのインパクトのある第一印象からついつい興味本位の内容を想像する人がいるかもしれません。けれども、人と微生物の関係の本質を鋭く突いた読み応えのある1冊です。サイエンス本としては数少ないベストセラーになった理由もうなずけます。初版は2016年ですが、その内容はいまでも色褪せることはありません。

プロローグで著者は次のように語ります。

『あなたの体のうち、ヒトの部分は10%しかない。

あなたが「自分の体」と呼んでいる容器を構成している細胞1個につき、そこに乗っかっているヒッチハイカーの細胞は9個である。』

 

この「ヒッチハイカーの細胞」とは、私たちのからだに共生している微生物のこと。腸内だけでも100兆ものマイクロバイオータ(細菌の群れ)が存在するといわれています。その総数は、ヒトがもつ本来の細胞の9倍。つまり、生物の基本単位である細胞の数で考えるなら、私たちのからだの9割は微生物というわけなのです。

そのマイクロバイオータとからだの関係について、肥満や自閉症、アレルギーなどの疾病を例にあげながら明快に語っていきます。そして、これら「21世紀病」が広がりはじめた時期が、近代医療の革命と重なることを指摘します。人間の寿命を飛躍的に延ばした医療革命にリスペクトを表しながらも、抗生物質の大量服用などがマイクロバイオータの乱れにつながり、現代のさまざまな病気を引き起こしているのではないかと示唆するのです。

微生物たちとの友情を温め直す

このような深刻なテーマにふれながらも、本書の行間からはたえず前向きの空気が立ち上ってきます。著者は、私たちのからだの中にいるマイクロバイオータを「人体の最古の友人」と呼び、「友情を温め直すチャンスは、まだ手の届くところにある」と語ります。

『親からもらった遺伝子や環境因子を変えることはできなくても、自分のマイクロバイオータを整え、育て、世話をすることはできる。何を食べるか、どんな薬を飲むかであなたの微生物は変化する。あなたが微生物を大切に扱えば、微生物もあなたにお返しをしてくれる。』

 

著者のアランナ・コリンは、イギリスの女性サイエンスライター。なによりもこの本を魅力的にしているのは、そのウィットに富んだ小気味よい文章でしょう。自身のエピソード、研究者や患者の横顔などを交え、話題もマイクロバイオータの働きや感染症の歴史から、母と子どもと微生物の関係、食事をはじめ暮らしのヒントまで、幅広い分野に及びます。2020年12月には文庫版も出版されました。ちょっと専門的かもしれませんが、人と微生物の関係を考える入門書としてもおススメの1冊です。

 

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