微生物のこと
2022.07.04

微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』

発酵の技法・ライブラリー

KOSMOST 編集部が読んだ“おすすめ本”ライブラリー。

微生物が愛らしくなる本を紹介します。 

 


ライブラリー 017

『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求 

サンダー・エリックス・キャッツ(著),水原文(訳), オライリー・ジャパン/オーム社, 2016年4月26日 


  

“はっこうちゃん。”の愛読書棚の一冊

数多くの発酵本の中でも、“はっこうちゃん。”が愛読している一冊が「発酵の技法」。世界の発酵を実践的、学識的に紐解いているだけでなく、並々ならぬ発酵への情熱が伝わってくる、発酵魂を揺さぶる本です。 

著者のサンダー・キャッツは、発酵界では知る人ぞ知る注目の人。発酵をライフワークに実践的に研究する第一人者といっても過言ではないでしょう。2016年に来日した時は醸造に明るい3つ星シェフ、蔵人、発酵人達がワークショップに参加していました。私も、参加者と共に憧れのサンダー氏とキャベツを刻んでザワークラフトを仕込んだのは今でも良い思い出です。それ以来、植物の乳酸発酵にさらなる興味を抱いて、色々試すようになり、今に至ります。

 

総括的な章立てのDIY発酵完全ガイド 

全14章、アルコール、野菜、乳製品、穀物、肉魚卵類、そのほか、あらゆる自然発酵を網羅しています。私たちが慣れ親しむ発酵調味料である味噌やしょうゆは「豆類や種子、ナッツを発酵させる」章で紹介されています。インドのレンズ豆発酵蒸しパン(イドリ)、メキシコのササゲ(小豆に似ている豆)の発酵揚げパンに続いて味噌の話になります。 

包括的に大豆の特性や栽培の世界的背景を紹介するだけでなく、普段思いつかない味噌の使い方が盛りだくさんです。味噌にピーナッツバターを組み合わせて、かんきつ系ジュースを加えて、ドレッシング!?などなど。同じ章にカカオ、コーヒー、どんぐりの発酵も入っており、日本の発酵本の章立てに慣れていると、一瞬戸惑いますが、思考が刺激されます。どの章も読み続けるうちに“試してみたくなる何か”があり、自分の発想が豊かになっていく感覚があります。 

 

自然発酵ライフスタイルの伴走書として

発酵食品は、正確には人間の発明ではない。自然現象を人が観察し、そこから美容発酵の方法を学んだのだ。

 

400ページ以上ある著書は、一度に読み通して完結するタイプの本とは異なります。食に留まらず、エネルギーや廃棄物処理、美容やアートと自然発酵の関わりも言及されています。

内容が濃すぎて、一度で全て理解することは至難の業かもしれません。読み手が自然発酵のライフスタイルを好む人であれば、発酵生活の字引となるでしょう。グルメで世界の食文化に興味のある人には、美味しさと微生物の関係を多角的に学べるでしょう。自然発酵への理解を深めたい方には非常におススメの一冊です。 

 

【微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー:バックナンバー】      

001:『見えない巨人―微生物』     
002:『細菌ホテル』     
003:『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』     
004:『微生物のサバイバル1・2』     
005:『日本発酵紀行』     
006:『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』     
007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』     
008:『ととのう発酵』ディスカバー・ジャパン2021年7月号     
009:『もやしもん』     
010:『最終結論「発酵食品」の奇跡』    
011:『世界一やさしい!微生物図鑑』    
012:『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』  
013:『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』  
014:『土と内臓―微生物がつくる世界』  
015:『ノーマの発酵ガイド』 
016:『生物と無生物のあいだ』
017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』(現在の記事)  
018:『人体常在菌のはなし ── 美人は菌でつくられる』  
019:『生物から見た世界』
020:『麹本: KOJI for LIFE』

 

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はっこうちゃん。

はっこうちゃん。

発酵現象は微生物がおりなす芸術だと感じている発酵研究人。原点は「食べることが好き」。食のワークショップだけでなく、美と健康に関わるグローバル企業にてブランディング、マーケティングに長年従事した経験を活かして、「発酵」を思考起点とするブランディング、ライフスタイルを探求している。 -------- Q. 腸をよりよくするために、気をつけていることは? →A. 一日のうち12時間は腸を休めてあげる(何も食べない)、常温の水を飲む   Q. 腸活で気になっていることは?  →A. 足、腸、脳の相互連携 ------- 🦠注目のコラム →余ったご飯でつくれる「お米酵母」~“はっこうちゃん。”の発酵あそび ------- 🦠 はっこうちゃん。の記事一覧

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