ちょっとくらいなら酸素があっても大丈夫!
毎月23日は2(ニュウ)と3(サン)で乳酸菌の日。この記念日にちなんで毎月、乳酸菌にかかわるトピックスをとりあげています。そこで今回は、小腸のお話です。なぜ乳酸菌と小腸? といぶかる人もいるかと思いますが、この小腸は私たちのからだの中でも乳酸菌がもっとも多くすんでいる場所なのですね。
乳酸菌に少しでも関心のある人であるなら、腸内細菌のことはご存じだと思います。私たちの腸の中にはたくさんの細菌がすんでいて「腸内フローラ」と呼ばれる生態系をつくっています。このうちの善玉菌の代表選手が乳酸菌でありビフィズス菌です。
しかし、この2つの善玉菌は、同じ腸内といってもすみかが違うことが知られています。腸は大きく2つの部分にわかれます。食べものを消化・吸収する小腸と、水分を吸収して便をつくる大腸です。乳酸菌は主に小腸に、ビフィズス菌は大腸で暮らしています。
この生息場所の違いは、2つの菌の性質によるものです。どちらも酸素が苦手な「嫌気性菌」と呼ばれるタイプなのですが、乳酸菌は少しくらいなら酸素がある場所でも生きていけます。そこで腸の中でも上流部にあたる小腸をすみかにしているわけですね。乳酸菌がヨーグルトや味噌、漬物など身のまわりの発酵食品で使われているのも、この「ちょっとくらいなら酸素があっても大丈夫」という性質のためなのです。
小腸の免疫力アップに乳酸菌が活躍
さて、乳酸菌のすみかとなる小腸ですが、私たちのからだの中でももっとも長い臓器といわれています。その長さは約6メートルほど! 内部はたくさんのひだ状になっていて、広げるとテニスコートの4分の1ほどの面積になるそうです。乳酸菌たちにとってなかなか居心地のよいすみかのような感じがしますね。
この乳酸菌の働きとしては、ビフィズス菌と同じように腸内を酸性にして悪玉菌の繁殖をおさえ、腸の調子を整えることがあげられます。さらに最近では、乳酸菌がもっと重要な役割を果たしていることが知られるようになってきました。
腸の上流部にある小腸には、消化・吸収のほかにもうひとつ重要な機能があります。それは病原菌などの侵入を防ぐ免疫力。そして、この小腸の免疫機能を活発にさせる役割を乳酸菌がしていることが明らかになってきました。
小腸の細胞と手を取りあって私たちのからだの中で日夜頑張りつづける乳酸菌。その姿を想像してみると、乳酸菌がいとおしくなってきませんか?
参考文献・サイト
https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada016.html
https://bifidus-fund.jp/keyword/kw020.shtml
https://www.asahi.com/relife/article/13770051
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