「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが書き綴るコラム。今回は、3話連続でコーカサス地方の国、ジョージアが舞台です。ローカルな市場を歩いて見つけた、「?」と目をひく発酵食品を紹介してくれます。
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トゥビリシの市場をのんびり歩いて
ジョージアの首都トゥビリシで、ローカルな市場「デゼルタール・バザール」に出かけてみました。体育館のようなながらんとした建物です。その総面積は2000平方メートルということで、テニスコート8つ分とかなり大きな施設。また、その建物の周りにも多くの商店や露店が軒を連ねていて、かなり活気がある区域です。店先には新鮮な野菜や果物、肉、野菜などが並んで、ジョージアって豊かな土地なんだなと実感させられました。あらためて地図を見ると、南は乾燥した中東地域、北は寒帯のシベリアですから、なるほどと納得させられます。
いくつかのお店に、プラスチックの大きな容器の中の液体に野菜が浮かんでいるという、これまでに見たことのないものが置かれていました。とはいっても、トマトや野菜なので見たことはあるわけですが、そんな風に水漬けにされたものは初めて見たのです。
塩水につけて香草などと一緒に発酵させたトマト
現地の方に聞いてみると、塩水にトマトを香草と共に漬けたもので、そのまま発酵させるのだそうです。どんな料理の付け合わせとしてよく食べられていて、自宅で作る人も多いそうです。
そしてさらに目を引いたのが、ペットボトルやガラス製のジャーに入った、鮮やかな赤と緑の「何か」です。
唐辛子のディップソース「アジカ」
赤いものは赤唐辛子、緑のものは青唐辛子を使っている「アジカ」というディップソースでした。
にんにく、ハーブ、コリアンダー、ディル、フェヌグリークといったスパイスと一緒に唐辛子を細かく刻んで混ぜたもので、味は辛くてスパイシー。肉や魚、野菜の料理にプラスして使われる万能ソースです。
この市場では大量生産されたものではなく、家庭で作られたものを持ち込んで並べている売っているようでした。ペットボトルなどにあらかじめ入れられたものもあれば、量り売りで買うこともできるようです。
ここトビリシでは、夏でも気温は20度から30度で、雨が少なく湿度は最高で17%ほど。ですから日本の夏ほど腐敗の心配が少なく、発酵に向いているようです。
近隣の農場のお母さんたちの手作りチーズ
市場の近くの建物の一部屋を除くと、チーズを台の上に並べて売る女性たちがいました。近隣の農村に住み、チーズを作ってはここに売りに来るのだそうです。
味見をしてみると、とても食べやすいチーズで、あっさり目の味。ジョージアには250種類ものチーズがあるということで、奥が深そうですね。
この棒状のものは「チュルチヘラ」というスイーツ。クルミやヘーゼルナッツを紐でつなぎ、ぶどう果汁と小麦を煮詰めたものをまとわせて2週間近くかけて乾燥させて作るのだそうです。使うぶどうによって色が異なります。もちっとした食感で、ぶどうの甘さが優しく感じられます。乾燥すればするほど固くなりますが、温めればまた柔らかくなるそうです。
ジョージアの話題を3回に渡って取り上げさせていただきました。1つの国で3つの話題というのは初めてのことでした。それだけ気になる食べ物があったんだなぁと、懐かしく思い出しました。
[All photos by Atsushi Ishiguro]