せかいのこと
2024.03.29

[梶原有里、世界への窓 第10回] オリンピック銀メダルからの新たな挑戦

梶原悠未・梶原有里・オリンピック

自転車トラック競技で活躍中の梶原悠未さん。2021年は東京五輪・世界選手権・チャンピオンズリーグに出場し、日本だけでなく世界に活動の場を広げています。欧州と日本を拠点にトレーニングを行っています。23年5月の全日本選手権では5種目優勝、6月アジア選手権では4冠を達成しました。24年夏・パリの金メダルを目指して、日々、厳しいトレーニングを重ねています。その母であり、マネージャーとして食事の管理などに携わる梶原有里さんの連載の第10回目。今回は、東京五輪で銀メダル獲得を経た心境の変化や今後についてのお話です。(2022年9月28日公開、2024年3月29日更新)

 


 [ 梶原有里、世界への窓 第10回 ] 

オリンピック銀メダルからの新たな挑戦


 

2021年8月8日、東京オリンピックの「女子オムニアム」で、悠未は女子選手史上初となる自転車競技での銀メダルを獲得しました。周りの方からは「結果も出せてやっと休憩できるね」と言われたのですが、銀メダルがやはり悔しかったようです。

悠未にとっては、レースは一旦終わってしまえば、それは変えられない過去のこと。瞬間的に、過去ではなく、次をどう勝つかを考えるのですね。試合が終わった瞬間に、メディアの前で、「パリ五輪は、金メダル獲ります」と次の目標を周囲に宣言していました。この気持ちの切り替えがとても早くて、選手ならではだと思いました。

 

東京オリンピックの結果を踏まえて、悠未は「あの練習をしたらよかった」「高地練習も必要になる」「ワールドレースにも挑戦したい」など、勝つために何が足らないかをすぐに言葉にしていきました。そうしていくうちに「まだまだやれることがある!」と、またワクワクしてきたようです。

梶原悠未・レース・自転車

東京五輪へ向けて、二人で「金メダルを獲る」と覚悟して以来、真剣という言葉では足らないくらい本気で取り組んできました。ですから銀メダルという結果については、私も「すごく嬉しい」という気持ちと「めちゃくちゃ悔しい」という気持ちが半分半分でした。

 

「一番」になることへこだわりを持ちつづけてきて、「もうやれることはない」と自信をもっていえるほど過酷な生活とトレーニングに全てを注いできました。それなのに、これでもまだ頂点に足らないのか、という悔しさがあったのです。

一方、負けることで新たな課題も発見できて、次の挑戦に目を向けることができました。その結果が、悠未の「パリ五輪金メダル宣言」だったのだと思います。私も、「もう1段階上の苦しい道を一緒に歩んでいこう」と気持ちを新たにしました。

梶原悠未・SNS

 

東京五輪を経て、悠未は「勝つために楽しむ」ことを知りました。

 

2022年4月、グラスゴー大会の女子オムニアムで優勝した時も、1種目目のスクラッチが12位と良くない順位だったにもかかわらず、悠未はレースがとにかく楽しくて仕方がなかったようです。グラスゴー大会は、若くて強い選手たちが集まります。世界のトップアスリートたちと肩を並べて走るワクワクから、競技中も走りながらニヤニヤしてしまうほど笑顔があふれてしまっていました。

 

つい最近も、「心の底から楽しむ」というのが勝利のポイントだねと悠未と話をしました。自転車競技において、本当に楽しむためには、真剣に勝つという気持ちがないと楽しめないと思っています。「楽しむ」というのは、多くの人や日本人がよくいう「楽しむ」ではなく、「勝つために楽しむ」なのですね。

 

2024年のパリ五輪に向けて、これからも悠未に誠心誠意尽くしてあげたいと思っています。食事のアドバイスや精神面のケアなど私ができることをしながら、二人三脚で金メダルを目指していきます。これからも悠未を応援してくださると嬉しいです。

梶原悠未・梶原有里

 

執筆:梶原有里 / Kajihara Yuri  

プロフィール

梶原有里・悠未・プロフィール写真

自転車競技で活躍中の梶原悠未選手の母であり、マネージャー。2児の母として子育てに取り組むとともに、長女、悠未さんのサポートを通じてスポーツ・マネジメントを学ぶ。現在は、悠未さんのマネージャーとして、練習のサポート、取材の対応、そして毎日の食事の管理に携わる。スポーツフードマイスター。アスリート栄養食インストラクター等の資格を取得。JADP認定メンタル心理上級カウンセラー。

https://www.twiter.com/ 
https://www.instagram.com/yurikajihara/

 

 

 

 

 

【バックナンバー】

[梶原有里、世界への窓 第1回]  銀メダルからの挑戦
[梶原有里、世界への窓 第2回]  マネージャーとして母として“食の大切さ”を思う日々
[梶原有里、世界への窓 第3回]  世界的アスリートの子育てポイントは「体験」と「興味」
[梶原有里、世界への窓 第4回]  世界的アスリートを育てた食事法
[梶原有里、世界への窓 第5回]  世界的アスリートが実践する海外遠征時の食事法
[梶原有里、世界への窓 第6回]  オリンピックを決めた「ある一言」とひとつの挫折
[梶原有里、世界への窓 第7回]  高校入学を機に水泳から自転車へ転身、オリンピック金メダルを目指す
[梶原有里、世界への窓 第8回] 脳トレでオリンピック・レベルの精神力を鍛える
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【梶原有里 イベント・レポート】
自転車アスリートの食事を梶原有里さんに学ぶ ~KOSMOST発酵ダイアログJANレポート

 

【梶原有里さん、梶原悠未さん インタビュー連載
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(1)
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KOSMOST 編集部

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KOSMOST編集部。2020年10月22日に創刊。おいしいこと、からだのこと、うつくしきこと、微生物のこと、おなかのこと、せかいのことをめぐる情報をつうじて、みなさまがウェルネス豊かなライフスタイルをおくれますように! -------- Q. ウェルネスのために心がけていることは? → A.いろいろな方々との発酵ダイアログから、新しいアイディアをうみだすこと! 🦠 KOSMOST編集部の記事一覧

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