おいしいこと
2024.03.29

自転車アスリートの食事を梶原有里さんに学ぶ ~KOSMOST発酵ダイアログJANレポート

発酵ダイアログ・梶原有里・オンラインイベント

発酵ダイアログ・梶原有里

「初めてのオリンピックでした」。

こうお話をはじめたのは、「発酵ダイアログ JAN by KOSMOST」のゲスト、梶原有里さんです。2021年の東京五輪の最終日、自転車競技で銀メダリストとなった梶原悠未さんの母としてマネージャーとして、食事面の管理などで悠未さんの大活躍を支えてこられました。今回、KOSMOSTの発酵ダイアログが、有里さんにとって初めての講演の機会となったことは、編集部にとって喜ばしいことでした。講演後は全国から参加された皆さんと共にダイアログ・タイムが行われました。その2022年123日に行われた梶原有里さんのトークをダイジェストでレポートします。(2022年2月13日公開、2024年3月29日更新)

 

笑顔がメダルへの道、臨んだオリンピック

私自身は、6年前から悠未とともに活動を始めました。昨年迎えたオリンピックは、私たちにとって、初めての経験でした。初めてのことはどんな時でも緊張するものです。顔も身体もこわばっていくことを何度も経験してきました。このオリンピックを初めてだと思わずに、どうやったら2回、3回と経験したことのように臨めるかを、ずっと考えていました。悠未とふたりで話したのは、この機会を悠未の過ごしてきた24年間の答え合わせだととらえようということ。やってきたことがあっていれば金メダルがとれるし、答えが違っていたらメダルはとれないかもしれない。でもチャレンジは大事だよと、ふたりでここまで来ました。

最後の2週間はさらに緊張していきました。そんな中で、メダルを次々ととっていくアスリートたちを見て、気が付いたことがありました。それは、強い選手ほど、最初のスタートラインに立った瞬間からレースが終わるまで、ずっと笑顔だということでした。笑顔が金メダルへの道だと気付き、1週間前の悠未との電話で、笑顔で楽しむことがオリンピックで勝つポイントじゃないかと話をしたんです。

試合当日、悠未は、満面の笑みで会場に入って、スタッフの人から笑いすぎじゃない?といわれるほどに、笑顔でした。私は観客席で応援していましたが、初対面の方たちが横断幕をかわるがわる持って応援してくださり、とても力になりました。

 

親がサポートできる3つのこと

今回、ご参加の皆さんから、マネジメントでは何をしているのかとご質問をいただきました。これについて、私は、親ができる3つのことがあると思っています。それは、「見守ること・気づくこと・可能性を信じてあげること」です。

 

「見守ること」では、悠未が起きる瞬間から観察するのが大事だと思っています。オリンピック前は伊豆で悠未と私と2人で合宿をしていたので、どのように起き上がったか?目を開けた瞬間はどうだったか?今日は起き上がりが悪いな、今日は体が軽いな、ということがすべてわかります。毎日悠未と一緒にいることができるからこそ、細かく観察をしています。

このように観察する中で、「気づくこと」ができます。例えば、疲れているなと気がづいた日には、のど越しのいい食事を用意します。朝食をおかゆにしたり、野菜をいれたり、バランスよく食材を入れて、食事を作るようにしています。

「可能性を信じること」は、勘違いしやすいのですが、期待することと同じではありません。子供がやりたいことを見守ることは必要ですが、過大に期待したり、こうだったらいいのに、ああだったらいいのにと求めるのは、親の傲慢だと思っていて、私自身はこの3つを特に気にかけています。

 

アスリートを育てた食の方針、心と体がリラックスできることを。

悠未の食事にはとても気を使っています。食卓の見た目も大事です。食べることは心と体がリラックスする大切なポイントだと思っていますので、見た瞬間にわくわくするように、彩を工夫して、かわいくアレンジしたりもします。お皿に盛りつけたときにわっ!と驚くような顔が見たいし、笑顔になれば食の楽しさが生まれます。

ですから、ルーティンにはしないで、その日に食べたいなという気分のものをつくっています。不思議と私の食べたいものと、悠未の食べたかったものが一致することが多いんですよ。

ただ、作り置きにすることは多いです。練習が終わって必ず30分以内に食事が出せるようにしているからです。3時間ぐらいかけて、17品ぐらい作っておくこともあります。ストックしておけるので、作り置きは和食系が多いですね。

 

3日単位、1週間単位、1か月単位でバランスを考える

小さいころから意識して悠未に食べさせてきた食事の内容をご質問いただきました。実は、絶対これ、というのは決めていないんです。むしろバランスよくとることが大事だと思って育ててきました。

嫌いなものは分からないように細かくして、いろいろなものに入れるなど工夫していました。後は、どんなにこれが嫌だ、アレが嫌だといわれても、必要だからつくるようにして、出し続けました(笑)。

3日単位、1週間単位、1か月単位でみて、これをとれてないかな、これが足りないかなということを考えて、バランスよく食事を出しています。ただ、味噌汁やスープの類は、必ずつくっています。汁が見えないといわれるぐらい、かなりたくさんの具材の種類をいれています。

それと、先日のインタビューでも悠未がお話しさせていただいたのですが、唯一、乳酸菌生産物質のサプリを取り入れています。悠未は、自転車競技の日本代表チームの栄養士さんにすすめられて、オリンピック前に腸内細菌検査を受けたんです。結果は、アスリートとしても一般的な人としても標準値を上回るということと、腸内細菌の多様性があって、腸内環境的に太りにくい体質であるということがわかりました。

 

食べる事だけじゃなくて、睡眠の質も大事です。休憩する時間、練習する時間、食べる時間、全部のバランスも含めての食事管理だと考えています。これらすべてが体をつくるものなのかなと思います。

皆様には、親のエゴではなく、子供たちが何をしたいのかということをきちんと見てあげてほしいです。お子さんの可能性を信じて、長い目で観察してみてあげてください。またぜひお話しいたしましょう。

 

ご参加の皆様、ありがとうございました。

発酵ダイアログ・梶原有里・集合写真

 

[ ここに注目 by KOSMOST編集部 ] 

★「見守る、気づく、可能性を信じること」について、子供を自分の価値観で支配してしまいがちな方もいるかもしれませんが、子供の人格を尊重して育てていることに感銘を受けました。お母さんでもあって所有欲で育ててはいけないのだなと感じます。

★「可能性を信じるが期待をしすぎない」というところが印象的でした。「対話」を大切にしていらっしゃることを感じます。特に、腸内環境のことを共有することは家族でもなかなか難しいことですが、梶原家ではくらしの中の対話も重視されていると思いました。

★スポーツをご趣味の範囲でもされる方もいらっしゃいます。人生を楽しんだり、生き生きと過ごしたりすることも大事な「発酵」現象。ウェルネスにつながることだと思います。

 

ゲスト・プロフィール

梶原有里・悠未・プロフィール写真梶原有里さん / Kajihara Yuri

自転車競技で活躍中の梶原悠未選手の母であり、マネージャー。2児の母として子育てに取り組むとともに、長女、悠未さんのサポートを通じてスポーツ・マネジメントを学ぶ。現在は、悠未さんのマネージャーとして、練習のサポート、取材の対応、そして毎日の食事の管理に携わる。スポーツフードマイスター。アスリート栄養食インストラクター等の資格を取得。JADP認定メンタル心理上級カウンセラー。

https://www.twiter.com/ 
https://www.instagram.com/yurikajihara/

 

 

 

【梶原有里 コラム バックナンバー】
[梶原有里、世界への窓 第1回]  銀メダルからの挑戦 
[梶原有里、世界への窓 第2回]  マネージャーとして母として“食の大切さ”を思う日々 
[梶原有里、世界への窓 第3回]  世界的アスリートの子育てポイントは「体験」と「興味」
[梶原有里、世界への窓 第4回]  世界的アスリートを育てた食事法 
[梶原有里、世界への窓 第5回]  世界的アスリートが実践する海外遠征時の食事法
[梶原有里、世界への窓 第6回]  オリンピックを決めた「ある一言」とひとつの挫折 
[梶原有里、世界への窓 第7回]  高校入学を機に水泳から自転車へ転身、オリンピック金メダルを目指す
[梶原有里、世界への窓 第8回] 脳のトレーニングでオリンピック・レベルの精神力を鍛える 
[梶原有里、世界への窓 第9回] 「笑顔」で晴れの舞台へ、オリンピック当日までの過ごし方
[梶原有里、世界への窓 第10回] オリンピック銀メダルからの新たな挑戦

 

【梶原有里 イベント・レポート】
自転車アスリートの食事を梶原有里さんに学ぶ ~KOSMOST発酵ダイアログJANレポート

 

【梶原悠未、梶原有里インタビュー 連載
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(1)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(2)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(3) 

自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(1) 
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(2)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(3)

 

 

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10代の頃、風邪ひとつ引かなかった母親がとつじょ病気で倒れ、介護生活をよぎなくされた。この頃、故郷の長寿村について調査研究をまとめた光岡知足氏の書籍を読んで、食事と腸内細菌の関係を知った。これがビオスマイルの微生物への関心のはじまり。 ------- Q. 「微生物とともに生きるライフスタイル」で大切にしていることは? → A. 朝の澄んだ空気の中、散歩は欠かせません。心も腸内も目覚ましタイム!! 🦠 BIO SMILEの記事一覧

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